ボクにしかでけへんやり方で、野菜の魅力を伝えたい

お笑い芸人でありながら、八百屋の店主として店を切り盛りする土肥ポン太さん。「ポンちゃん」の愛称で親しまれ、現在、毎日放送「せやねん~菜食生活・土肥ベジ太ブルコーナー」でも活躍中。昨春には季節の野菜の目利き・保存法・簡単レシピを紹介した「野菜の教科書」(発行:ぴあ株式会社)も出版。
野菜を語らせたら、お笑い界で右に出る者はいない“野菜芸人・ポンちゃん”に、弊社クックビズ株式会社 社長・藪ノがインタビュー。八百屋を始めたのは?野菜の魅力って?聞きたいことがいっぱいです。

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本名/土肥耕平(どひこうへい)。よしもとクリエイティブ・エージェンシー大阪所属。若手芸人時代の八百屋でのアルバイトを経て、2004年に八百屋として独立。現在、株式会社ポン太青果 代表取締役社長。(大阪市住之江区南港北2-1-10 南港ATC 北館2F)。“野菜芸人”としてブレイクし、毎日放送「せやねん~菜食生活・土肥ベジ太ブル」で活躍中。著書に「土肥ベジタブル 野菜の教科書」。

 

現在、大阪南港のショッピングモールATC(アジア太平洋トレードセンター)で「ポン太青果」を営まれているんですよね

昨年、生野区から移転しました。ATCは誰でも知ってる場所やし、週末はイベントもあって賑やかしいし、モール内には飲食店も多いんで、お店からの注文も多いんですよ。高速の乗り場も近いから、産地の買い付けも行きやすくてね。芸人との二足のわらじを履いているとアクセスが良いのは必須です。

八百屋を始めた理由はなんだったのでしょうか
ご実家の商売なんですか

実家は八百屋ではないんですよ。ボクの家は裕福な家庭ではなかったんで、小さい頃は漠然と「社長になりたいなァ」「金持ちになりたいなァ」と思ってましたね(笑)。
芸人になることも夢にも思わなくて。思い出作りにと同級生に誘われて吉本総合芸能学院(NSC大阪)のオーディションを受けたら合格してしまいまして。そいつとコンビを組んで芸人をやり始めたら、何が良かったんか、ありがたいことにスルスルとテレビやラジオに出られるようになってね。学校でも目立たない地味な二人やったから、地元では「なんでこの二人が?」なんて言われました。

中高生の頃はおとなしかったんですね、意外です

そうなんですよ。しかしお笑いで生きていく覚悟もないまま売れたんで、世の中ナメてしまってまして。甲斐性もないのに借金つくったりしてね(苦笑)。しかしそんな甘い世界じゃないですからね。デビューして8年経って、(アレ?仕事ないやん)って、自分の置かれている立場に気づきました。相方は芸人を辞めるし、「これはヤバい、バイトせな生活できへん」って思って勤めたのが八百屋さんです。

仕入れは今も自分でするというポン太さん。「2足のわらじはしんどいけど、やるからにはとことんやりたいしナァ」

仕入れは今も自分でするというポン太さん。「二足のわらじはしんどいけど、やるからにはとことんやりたい」

 

エッ! それで八百屋に?
ほかのアルバイトは考えなかったんですか?

芸人を続けていたんで、早朝のバイトを探したんです。八百屋は、7時スタートで昼過ぎに終わるんで、これはありがたいナと。売れる前の下積み時代のバイトの話って芸人にはよくありますけど、ちょっと売れて、ドン底に落ちて、狭間のバイトってカッコ悪いでしょ(苦笑)。でも背に腹は代えられんという感じでしたね。

そこで野菜の魅力にハマったんですね

そうですね。最初は、小松菜とホウレンソウの見分けもつかなかった。今から考えると、八百屋の大将もよくボクを仕込んでくれましたね。大将は、若手でバリバリ商売をする方で、当時としては合理的な商いをしていました。野菜の値頃感、クオリティ、人が集まる八百屋と集まらない八百屋の違いなど。農家はおいしい野菜を作ることが仕事だけど、八百屋はいいもんばっかり置いても高けりゃ売れない。バランスが大事で、そんな八百屋としてのスキルを惜しみなく教えてくれました。そのうえ野菜は、調理法で味わいも食感も変わるし奥が深いでしょ。芸人でドン底やった時に、一生懸命になれるものがあったのはラッキーでした。ほんまに大将や野菜に助けられた感じですよ。

八百屋とお笑いを両立させているなんて、ポン太さんはバイタリティがありますよね
どちらかを辞めようとは思わなかったんですか

いや、思いましたよ。独立したのは2004年。バイトして3年経った頃です。30歳を過ぎたし、芸人としても鳴かず飛ばずやったから、きっぱり会社に辞表を出そうとしたんです。でも当時のマネージャーが熱心に引き止めてくれました。違う人やったら辞めてたと思います。やっぱり人の縁って大切ですね。それで芸人+八百屋の今のスタイルになりました。

R-1ぐらんぷりでも決勝にいったほどの実力ですし、どちらのポン太さんにも期待したいところです

いやいや、これもまた野菜に助けられたみたいなもんで。2007年にはR-1ぐらんぷり(ピン芸人お笑いコンクール)で決勝に残りましたけど、「芸人やけど…あいつ八百屋らしいで」と、ネタよりそっちのほうが前ウケしたみたいで、それがきっかけで野菜や料理をテーマにしたバラエティ番組からお呼びがかかるようになりました。それに店に立つと、来店するオバちゃんがオモロイのなんのって。芸能界にどっぷりいてると一般のオバちゃんと会話することないでしょ。店ではお客さんにトークを鍛えてもらってます(笑)。

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「オバちゃんはほんまに偉大。家計を預かる主婦力とトーク力。八百屋としても、芸人としても多くを学ばせてもらってます」。

ポン太さんの店は若いスタッフがいっぱいですよね
農家さんと接する機会も多いと思いますが、第一次産業に興味がある人ってまわりで増えている実感ってありますか?

うちでバイトしたい、正社員になりたいという若い人は多いですよ。しかし、よく話を聞いたら、八百屋もさることながら、「農業をやりたい」「自然に関わるような仕事に就きたい」と思ってるんですよ。だから実際に農家さんに紹介したこともあります。取引先の農家も若手が増えています。皆さん、これまでの販路に満足することなく、自分たちで産直店を開いたり、独自の販売スタイルを作ろうと努力してます。これからどんどん変わると思います。

農業をカッコいい仕事にするための打開策があれば教えてください

ボクは、若い農業人を増やしたいし、そんな仕組みを作ろうとも思っています。そのためには農家さんの安定した収入が大事やし、売れる商品づくりがポイントになってきますよね。今は核家族化で、いくらお得でも大きすぎる野菜は売れないことも。「一回り小さくして、ちょっと安くする方が売れるで」とか、市場の声を農家さんに伝えるのもボクの役割と思ってます。

あとは農家さんの作り手としてのストーリーをお客さんに積極的にお届けしたい。産直売り場で農家さんの顔写真を貼り付けてるのを見ますけど、“作り手の顔が見える”ってそういう意味なんかな。顔が見えればそれで伝わるんかな。ネタ作るのと似てて、いきなりボケかましても、前フリがなかったら笑えないでしょ。ボクは、その前フリとして店頭でお客さんに伝えたり、マルシェを開いて生産者さんのストーリーや野菜の魅力を伝えたいと思っています。

芸人ポン太さんなら、テレビなどメディアを使ってたくさんの人に伝えられますよね。ムック本「野菜の教科書」は分かりやすくていいです!

野菜の専門書なんて世の中にいくらでもあるし、野菜の魅力を知ってもらうための入口になればと思って「野菜の教科書」を作りました。
テレビも、どんだけの人が見てくれてるかわからんけど、ボクが農場に出て、作り手のストーリーを現地から伝えたり、おいしい食べ方を紹介したりすることで、農業って仕事もあるんやな、おもしろそうやなと思ってもらえたらいいですね。

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「土肥ベジタブル 野菜の教科書」(発行/ぴあ株式会社)920円+税

農業は大変ですけど、都会にはない生活の豊かさがありますよね

そうそう、例えば知り合いの農家さんから、「早朝、野菜の面倒みたら、昼から嫁さんに任して釣りに行くんや」とか言われてるとね。エエなァ~ってね。都会では収入やモノの豊さはあふれているけれど、これからはその人にとって魅力ある暮らしかどうかが一番やし。

野菜をテーマに今後やってみたいことはなんですか?

海外にも目を向けたいと思ってます。この前、後輩芸人が番組の企画でタイに行ったんですけど、日本食ブームの影響か、日本の野菜がけっこう売れてるそうで。そんなとこにもマーケットがあるんやってビックリ。八百屋で進出するか、輸出で進出するか思案のしどころ。とにかく需要はありそうやなぁと。
あとはアメリカで日本の収納テクニックの本が売れてるというのを聞いて、野菜の繊細な魅力を伝える本を海外で出したらいいんちゃうかとかね。大量生産、大量消費のアメリカで、野菜の保存法次第で、包丁の入れ方一つで味わいが変わることを伝えたいです。

そのアイディアいいですね!ぜひ形にしてください
吉本興業さんで仕事として行ければ一石二鳥ですね

ううーーーーーん。イヤ、それは吉本抜きでやりたいワ(一同、爆笑)。
今年も、芸人業に八百屋業、励みますんで応援よろしくです。

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笑顔がステキな土肥ポン太さん(左)。弊社社長 藪ノと2ショット!

芸人と八百屋という2つの仕事を抱え、多忙を極めるポン太さん。野菜に助けられたから、芸人として自分なりのやり方で野菜の魅力を伝えたいと語ってくれました。ファームビズ(farm+biz)は、これからも“野菜芸人”ポンちゃんを応援しま~す!

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土肥ポン太さんの、お仕事の七つ道具を拝見

カバンの中には、いつでも決済できるように電卓と印鑑が。さすか経営者! 「農家さんの信頼を得ることができるようマーケットに真面目に取り組んで、伝達者として魂込めて仕事せな」と話すポン太さん。大阪にお立ち寄りの際は、ぜひ「ポン太青果店」を訪ねてみてくださいね。

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電卓が登場~!さすが八百屋さん

■株式会社ポン太青果
大阪市住之江区南港北2-1-10 南港ATC 北館2F
http://www.pontaseika.com/

■毎日放送「せやねん~菜食生活・土肥ベジ太ブル」
毎週土曜日 午前9時25分より放送中
http://www.mbs.jp/seyanen/corner-reference/vegetable/2015/06/13-41167.shtml

取材/藪ノ賢次
文/杉谷淳子

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