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大和当帰(やまととうき)は薬草の一種。花も可憐でかわいい。

人の“こころ”と“からだ”をあったかく。福祉を支える農業法人としてスタート

「ポニーの里ファーム」は、2006年に創業。「農」を通じて若者、高齢者、障がい者の雇用を生み出すことを目的にスタートした農業生産法人です。人の“こころ”と“からだ”に寄り添いながら、季節の野菜や薬草の栽培を行い、商品製造、販売まで行っています。

「もともと当社の代表が、障がい者のための乗馬セラピーを行う『ポニーの里』を経営し、障がい者の生活をサポートする「NPO法人ポニーの里をつくろう会」が発足。障がいを持つ方々が働ける場所をつくろうと奔走し、農業生産法人『ポニーの里ファーム』が誕生しました。高取町には、休耕地も多く、兼業農家のスタッフもいて農業を仕事にする環境がそろっていたんです」。

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農業生産法人「有限会社ポニーの里ファーム」統括マネージャー・保科政秀さん。大学で地域づくりのフィールドワークとして高取町を調査したことがきっかけで、この町の振興のために移り住んだのだそう。

くすりの町・高取町の地域発展のために、薬草栽培にトライしたら予想以上の出来栄えに

高取町は、豊かな自然に恵まれ、薬となる植物が豊富にあったことから「くすりの町」として栄えてきました。日本書紀によると推古天皇の時代にまでさかのぼることができるのだそう。江戸時代には、大和売薬(やまとばいやく)の行商も盛んとなり、今も製薬会社がいくつか残っています。現在、「ポニーの里ファーム」の主力となっている薬草「当帰(とうき)」は、中国最古の薬物書『神農本草書(しんのうほんぞうきょう)』にも記述がある生薬です。根っこが漢方として使われ、血の巡りを整え、冷え性、痛み止めのほか、婦人科系の生薬として知られています。栽培に手間がかかるため、日本では量産しにくく、現在は中国産など海外から輸入しているケースが多いのだとか。

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大和当帰の畑。せり科の仲間。漢方では、「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」などに使われます。

当帰のなかでも、大和当帰(やまととうき)は小ぶりですが品質が良く、奈良県では系統維持、栽培の普及に努めているそうです。

「『ポニーの里ファーム』では、青ネギとお米のほか、季節の野菜を栽培しています。大和当帰を栽培するようになったきっかけは、県の職員の方から依頼があったので。地方活性化のために、奈良を漢方のメッカにしようと行政が取り組みはじめたところでした。じゃあ、まずは試しにという気持ちで薬草栽培をしてみたところ、これが意外にいいものが作れたんです。2012年には、奈良県 産業・雇用振興部主導で『奈良県漢方のメッカ推進プロジェクト』も動き始め、官民連携で事業を続けることになりました」。

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「大和当帰」の種苗。

最初は全く売れず…。転機となったのは農業仲間とのつながりができたこと

「2012年に食用として、大和当帰の葉の使用が認められ、商品化にふみきったものの、最初はまったく売れなくてね。『大和当帰』ってなに?という感じですよ。これまでどおり、青ネギとお米を作っているほうが良いのではと悩んだこともあった」と苦笑いする保科さん。
転機のきっかけは、農産物を扱うマルシェなどに地道に出店するうちに、農家仲間ができたこと。

「『薬草を作っている農家はめずらしい。みんなが作ってないもんを作るのは強みや。今、しんどくても続けたほうがいい』と先輩農家さんに言われたのは大きかったですね」。
先輩農家さんの言葉通り、じわじわと評判をよび、「大和当帰」を使ったハーブソルトやお茶が注目されることに。

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「大和当帰」の良さを消費者にじかに伝えようと、イベントにも積極的に出店。「足湯」、気持ちよさそう~~。

あえてマイルドにしない。強みは農家だからこそできる、食材のクセを活かした商品づくり

「『ポニーの里ファーム』でつくる商品の最大の特徴は、できるだけ薬草そのものを感じるように開発している点です。大和当帰は、セロリに似た強い独特の味と香りが特徴で、万人ウケしない。しかしあえて隠したり、マイルドにしたくなかったんです。やっぱりそれは自分たちが作物を作る側の人間だから。育てた食材そのままを活かしきりたいという気持ちがあります。ありがたいことに、世間ではハーブがブームになり、30~40代の女性を中心にリピーターが増えていきました」。

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当帰葉入りハーブソルトは人気の商品(香塩 35g/540円税込み)

強い個性が逆に消費者に受け入れられるきっかけになったという保科さん。売れ行き1番はハーブソルト。鶏肉や白身魚と相性抜群。ちょっと一振りするだけで、一味違ったお料理に。ドレッシング代わりにもなるそうですよ。

これからも障がいのある方とともに。

「これからも障がい者の方が、長く安定して働けるように努めていきたい」と保科さん。あえて手作業を残し、大規模な機械化はせずに、自分たちの目と手が行き届く小ロットの生産をしていくつもりだそう。

「例えば焙煎なんかは、家庭用の土鍋でしています。赤字では話になりませんが、障がいといっても、発達障害、知的障害、精神疾患の方もいる。各自個性があるので、その方のスキルに応じた業務をお任せしています。収穫や出荷作業などを行ってもらっていますが、業務の流れについては、まだまだ課題が多いと感じています。まずは作業の「見える化」が課題ですね。言われたことだけしていると、指示待ちになって手持ち無沙汰になったりすることも。また、この作業は、こんなふうに仕事をすれば、次の作業を行う人がやりやすい…とかね、そのためにも作業の「見える化」です。業務の流れがどんな人にもわかるような仕組みをつくっていきたいですね」。

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焙煎大和当帰葉茶(12.5g/800円税込み)

どんな仕事も、自分が役に立っていると思うことが何より張り合いになるもの。保科さんは、農福連携を長く安定して続けていくためには、障がいのある方への対応は専門家にも入ってもらい任せる部分をつくるなど分業化も検討中とのこと。
「『ポニーの里ファーム』は障がい者の作業所ではなく、あくまでも農業生産法人。そうあり続けることが、農副連携の継続性につながる」と話します。

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さまざまなイベントで、ワークショップを開催。調合して、自分だけのスパイスづくりなど、評判も上々です

興味のある方は、ぜひ畑にあそびにきて♬ ただいまスタッフ募集中

まずは私たちの取り組みを広めていきたいので、マルシェやイベントにも出ています。そこでは販売だけでなく、どんな植物かを知ってもらうために、薬草ワークショップを開催。「大和当帰」をはじめハーブをお好みに組み合わせてスパイスやふりかけを作ったり。草木染めや足湯なども好評です。ご要望があれば、出張ワークショップも承りますよ」。

直近では9月15日に、奈良公園で行われる食のイベント「シェフェスタ」に出店するそう。奈良県の食材を使った、一流シェフがつくる料理を気軽に味わえるフードフェスティバルです。

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保科さんに最大の悩みをお聞きすると、開口一番、
「今の悩み?それはやっぱり人材ですよ。スタッフ数が足りないですね。ぼくらに興味をもってくれたら、イベントだけでなく、畑や作業場に見学にきてくださってもOKです。現在はスタッフ5人、男4人、女1人、27歳~63歳まで幅広い世代が活躍しています。福祉事業所の方が日々お手伝いにくるので、作業するときは女性も多いですよ」。

「ポニーの里ファーム」の活動に興味を持った方は、ぜひイベントや畑に行ってみませんか。最近では、奈良県立医科大学と早稲田大学とタッグを組み、農村観光医療ツーリズムも行っているそう。薬草栽培×6次化×障がい者雇用にトライする「ポニーの里ファーム」の可能性は、まだまだ広がりそう!「ここで働きたい」というスタッフ希望の方もぜひ。保科さんはじめ、スタッフがあたたかく迎えてくれますよ。

【出店・イベント情報】
■イオンモール高の原(京都府木津川市)
9月7日(金)~10日(月)/薬草を使った調味料など物販

奈良フードフェスティバル「奈良公園」シェフェスタ in 奈良
9月15日(土)~17日(祝)/薬草を使った調味料など物販
9月22日(日)/「ワークショップ薬膳」

【問合わせ】
農業生産法人 有限会社ポニーの里ファーム
奈良県高市郡高取町丹生谷883-6
℡ 090-5886-2615(保科:ホシナ)
★スタッフ募集中★
http://ponynosatofarm.shop-pro.jp/

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