今回の田舎の住まい情報は、和歌山県田辺市にズームイン。昨年12月、梅栽培を中心とした伝統的な農業形態が「世界農業遺産」に認定にされ話題となった、みなべ・田辺地域の一角です(*関連記事)。また、 2004年に世界遺産に登録された熊野本宮大社や熊野古道の地としても知られています。伝統と文化が息づく田辺市の魅力と移住・定住支援について、田辺市 山村林業課 山村振興係の坂本さんに伺いました。

田辺市全景

田辺市ってどんなところ?

紀伊半島の南西、和歌山県の南部に位置する田辺市。2005年、旧・田辺市、龍神村、中辺路町、大塔村、本宮町の5市町村合併で、人口約77,000人、面積は約1,000km²に拡大しました。広大な市域は9割を森林が占めるため、林業や製炭業が盛ん。また、温暖な気候は和歌山特産のみかんや梅などを育み、黒潮紀南分流はアジ・サバ・シラスなどさまざまな水産資源を生むなど、農業・漁業も盛んな地域です。

田辺市MAP

車利用で阪和自動車道・松原JCT(大阪)から紀伊田辺ICまで約1時間半、JR特急利用で新大阪から紀伊田辺まで約2時間のアクセス。

田辺市は、907年の宇多法皇の行幸が始まりとされる熊野参詣や、開湯1800年の日本最古の湯「峰の湯温泉」など古くから観光地として栄えてきました。現在も、みなべ・田辺地域だけで全国の梅生産量の半分を占めるという梅林の光景や、日本三美人の湯「龍神温泉」のほか、海・山・川が揃うアウトドアのメッカとしても全国に知られています。

「口熊野」で里山暮らしを叶えてほしい

熊野古道の入り口に位置することから「口熊野」と呼ばれる田辺市。人口は、2005年の合併直後には約82,500人でしたが、10年経って77,000人と減少をたどってきました。市では、まず高齢化の進む山村集落から活気を取り戻したいと考え、2008年、山間部とつながりの深い山村林業課に山村振興係を設置。伝統ある里山暮らしの魅力を発信したり、田辺市ならではの移住・定住支援など、山村振興係が進める取り組みは次の通り。

湯の峰温泉

日本最古の湯として知られる「湯の峰温泉」。熊野へ詣での人々は、湯垢離場(ゆごりば)として身を清め、長旅の疲れを癒したとされています。

その1 芸術家を招いて地域活性

1983年に旧龍神村は、芸術家たちの意欲的な活動に力を得て魅力的な地域づくりをしようという「龍神国際芸術村構想」を立ち上げました。2003年からアトリエ付住宅を計9戸を設置し、当初は家賃を5年間無料で提供。新進の芸術家の間で話題になり、芸術家の集う村として全国から注目されるようになりました(満室のため現在は募集なし)。「田辺市の自然環境は、創作活動をする芸術家にとっても魅力的な資源なんですよ」と、坂本さんはいいます。例えば、チェーンソーアート作家は杉・桧など龍神材を素材に使い、エアブラシアーティストは里山の自然からインスピレーションを得て創作活動を行っているのだそう。芸術家たちは自然資源を崇拝し、地元にも溶け込んでいるからこそ、地域の活性化につながっているんですね。

その2 定住への準備期間を支援

現在、田辺市ではあえて空き家バンクを開設していません。「物件の前に、現地の風土やそこに住まう人を見てほしいと思っているからです。山村振興係に問い合せてもらえば、現地をくわしく案内します」と、坂本さん。実際に会って、物件の所有者と借主、双方にとってふさわしい方を橋渡ししています。また、市外から移住を考えている人がじっくりと住まいや仕事を探せるようにと、最大1年間格安で宿泊できる「短期滞在施設」を用意。制度開始の2009年度から現在まで34世帯が利用し、35%の世帯が田辺市へ移住されているそうです。移住に少しでも不安なことがあれば、山村振興係のみなさんに相談してみて。
※「短期滞在施設」の詳細については、下記の物件情報(その2)を参照ください。

高原棚田

霧の里・高原(たかはら)。棚田の曲線美がのどかな里山風景を演出。

その3 空き家改修をダブルで補助

県外から移住して空き家に住む場合には、県と市の空き家改修支援補助金制度を併用して受けられます。併用は、田辺市のみの手厚い支援制度。空き家所有者もしくは借主のどちらが負担しても対象になります。この制度は、県は2010年度、市では2013年度に制定して以降、すでに24件の利用があり山間部にも移住者による新しい風が吹いているようです。

和歌山県の補助金制度
改修費120万円を上限に2/3を補助(最高80万円)
田辺市の補助金制度
120万円を超える改修費のうち40万円を上限に1/2を補助(最高20万円)
※2016年度から、田辺市の制度は、改修費160万円を上限に1/2を補助(最高80万円)にアップ。県と市をあわせて、最高160万円(補修費240万円のとき)の補助金が支給されることになりました。

製炭業

田辺市は高級製炭「紀州備長炭」の発祥の地。市では、備長炭製炭士の育成にも力を入れています。

その4 田辺の魅力を活かした起業を

県外から移住して起業したいと考えるなら、起業支援制度にも注目です。制度利用には審査会での認定が必要ですが、県の補助金に加え、市の補助金が受けられます。起業支援の併用受給できるのも、県内で田辺市だけの制度。2012年度に始まって以来、映像関係・工芸関係・飲食店経営など、前身のスキルを活かした分野で起業しています。豊かな木材を使った創作や、みかん・梅などの特産品を積極的に取り入れた飲食店など田辺市ならではの起業は、地元の人の協力もあって地域に根ざしはじめているそうです。

和歌山県の補助金制度
起業に係る経費のうち最大100万円補助
※対象は、和歌山県内の移住推進市町村の支援を受けて移住するまたは移住した60歳未満の方で、起業し10年以上定住する意志のある個人
■田辺市の補助金制度
起業に係る経費のうち100万円以上の1/2(上限50万円)
※和歌山県内の移住推進市町村(※)の支援を受けて同市町村へ移住するまたは移住した60歳未満の方で、起業し10年以上定住する意志のある個人

田辺祭り

紀州三大祭りの1つ「田辺祭り」。450年余の歴史を持ち、「笠鉾(かさぼこ)」と呼ばれる山車の巡行が見もの。

その5 就農を目指すならワーキングホリデーも

田辺市暮らしを考える人には、まず「秋津野ガルデン」での農業体験がおすすめ。2008年に地域住民が出資し設立した、都市と農村の交流を目的としたグリーンツーリズム施設で、気軽な農業体験から本格的な農作業、農家暮らしなどを体験できるところ。「梅やみかんの栽培体験や地元の農家さんとの交流を通して、まずは田辺の暮らしをわかってもらえるのでは」と坂本さん。また、秋津野ガルデンでは農業の後継者不足など、地域の課題についても取り組んでいます。その一環として、地元農家さんと協力しワーキングホリデーを実施したり、新規就農者の育成に努めているそうです。就農を考えている人は問い合わせてみては?

秋津野ガルデン

中辺路・近露

熊野古道へいざなう中辺路・近露の風景。阪和自動車道・紀伊田I.C.から車で50分。

「市街地から車で1時間の距離を近いと思う人も、不便に思う人もあるかもしれませんが、一度訪ねてもらえれば『1時間でこれだけの風景に出会える』と思っていただけるはず」と、坂本さん。まもなく、下記の通り移住相談会が開催されます。まずは、地域の担当者に直接相談できる機会をお見逃しなく!

■『わかやま移住相談会』が開催されます!
日時:4月28日(木)19:00~21:00
場所:シティプラザ大阪

田辺市 空き家物件をピックアップ!

現在、田辺市ではあえて空き家バンクを開設していませんが、和歌山県の空き家バンクに一部情報を提供。和歌山県の空き家バンク掲載の参考物件と、「短期滞在施設」の詳細をご紹介します。山村振興係が情報を管理している登録物件も増えているそうなので、まずは現地を訪ねてみませんか。

[参考]家賃相場:1~3万円/月(3~4DK程度の戸建て・庭付き)
※改修費を所有者、借主のどちらが持つかで変わる)

PICK UP その1 あこがれの森の暮らしを実現!

毎朝、紀伊山地からの澄んだ空気で深呼吸。こんな一日のスタートって、素敵ですよね。
約5,000㎡の敷地には田畑も。農機具つきなので、地元のみなさんにアドバイスをもらいながら、すぐにでも農業をはじめられます。手づくりの窯では、森の恵みを具材にしてピザを焼いてみませんか。自然あふれる豊かな暮らし、お約束します!

物件1_外観

物件1_内観

物件1_間取り

■物件情報
売却価格:350万円
構造:木造平屋建 1945年建築
土地面積:5,183㎡(1567.9坪)
延べ床面積:1階 141㎡/2階 42.7㎡
設備:電気/有 飲用水/谷水、ガス/プロパンガス
風呂/灯油、トイレ/汲取り
庭/有 、 物置/有
駐車スペース/あり

PICK UP その2 田辺暮らしをゆっくりお試し。最長1年間利用できる「短期滞在施設」

ゆっくり住まいと仕事を探しながら、田辺暮らしにふれてほしい。季節の移ろいを感じながら、市が設置する「短期滞在施設」を最長1年間利用できます。木漏れ日がやさしく差し込む快適な部屋は、龍神地区4戸、本宮地区2戸(2016年3月16日現在)。気になる方は、早目にお問い合わせを。

物件2_外観

物件2_内観

物件2_間取り

■物件情報
賃貸価格:12,000円/月
敷金:36,000円
構造:木造平屋建、1996年建築
延べ床面積:40.16㎡
設備:電気/有、飲用水/水道水、ガス/プロパンガス
風呂/有、トイレ/有、駐車スペース/有
(滞在可能期間は1年間以内)

※掲載している物件はいずれも2016年3月16日時点での情報です。
※上記は田辺市の参考物件として掲載しています。
※物件への問い合わせは、田辺市山村林業課・山村振興係まで。

【移住の相談窓口】
田辺市山村林業課・山村振興係
TEL.0739-48-0303
http://www.city.tanabe.lg.jp/

 

 

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