牛を育て、肉を販売する”直販”精肉店の日々を追う
命を”いただく”ことを見つめるドキュメンタリー

こんにちは、farm+bizライターの築出です。今日は映画『ある精肉店のはなし』をクローズアップ。大阪で7代続く精肉店一家の暮らしを追ったこのドキュメンタリーは、平成26年度文化庁映画賞「文化記録映画大賞」や、第87回キネマ旬報「文化映画ベスト・テン」第2位などを受賞。口コミでも広がり、現在でも自主上映会がさかんに開催されています。

ある精肉店のはなし/画像(加工2)

北出精肉店のみなさん。精肉店が使用する102年続く屠畜場にて。


命をもらって、人は生きていく

ドキュメンタリーの舞台は、大阪府貝塚市にある北出精肉店。創業から7代続くまちのお肉屋さんです。北出精肉店は一家で牛の育成から屠畜、肉の販売までを行ってきました。
映画は、1頭のたくましい成牛が昭(あきら)さんに誘導されながら、少し離れた屠畜場まで道路を歩いていくシーンからはじまります。

興奮ぎみでときどき立ち止まったり、首をふる牛。そのたび昭さんは、牛をなでて落ち着かせます。
屠畜場に到着すると、7代目店主で長男の新司さんと次男の昭さんで牛の眉間をハンマーで叩きます。ハンマーを打たれた瞬間、バタンと倒れこむ牛。一瞬の緊張ののち、牛は北出さん家族4人によって、素早く解体されていきます。

家族の阿吽の呼吸、包丁一本で皮をはぐ熟練の技など、解体の流れるような作業には、目を離すことのできない迫力がありました。

ある精肉店のはなし/画像3

北出精肉店では、牛舎で屠畜する牛を約2年間愛情こめて育てます。自ら育てた牛を殺し辛くないのか?と尋ねられることもあるそう。
その問いに対して昭さんは、「鶏を”絞める”というように、牛や豚を屠畜することを”割る”といって、殺すと言わない。牛から貴重な命をいただいている」と語ります。

肉は店頭に並び、内臓は郷土料理の具材や石鹸の油の材料に、皮はだんじり祭りの太鼓として使用されます。牛の命が人の糧となり、地域の文化財に生まれ変わっていく姿は、私たちの暮らしがさまざまな命に支えられていることを改めて教えてくれます。

ある精肉店のはなし/画像4


いわれのない差別に、信念をもって戦う美しさ

北出家の兄弟には、被差別部落ゆえにいわれなき差別を受けてきた6代目店主の父の姿が今なお残っています。新司さんらは「差別のない社会にしたい」と部落解放運動に関わってきました。
普段お茶目な新司さんが「なぜ活動を続けるのか」胸の内を語るシーンは、人が信念を持って生きていく美しさを捉えた、とても印象的な場面です。
監督の纐纈あやさんは「生まれ出た場所で、自分が自分として生きること。それを考え抜き、生き抜いてきた彼らはしなやかでありながら、揺ぎなく、果てしなく慈愛に満ちていた」と語ります。

映画は、地域の盆おどりやだんじり祭り、お正月、そして2012年3月の屠畜場閉鎖の日─、と北出家との地域の結びつき、変化も映しだします。そんななかでも、北出家の食卓はいつもとかわらず賑やかです。私はこの映画から、毎日を真摯に生きる大切さを教えてもらったように思います。

 

映画をみんなで語り合おう!
自主上映会も全国で開催可能

『ある精肉店のはなし』は自主上映会が可能です。まちのホールや集会場、学校、お店などで上映会を開いてみませんか。詳細は映画公式サイト、またはやしほ映画社までお問い合わせください。

■『ある精肉店のはなし』
監督:纐纈あや 製作:やしほ映画社、ポレポレタイムス社
(2013年/日本/108分)

■監督プロフィール/纐纈あや(はなぶさ・あや) 1974年、東京都生まれ。2001年、ポレポレタイムス社に入社。写真家・映画監督の本橋成一氏の映画製作に携わるようになり、初監督作品のドキュメンタリー『祝の島』(2010年)は東日本大震災後、大きな話題を呼ぶ。『ある精肉店のはなし』は待望の2作目。

■映画公式HP
http://www.seinikuten-eiga.com/

■やしほ映画社
Tel:0422-38-6424
Mail:info@yashihofilms.com

 

 

関連記事