こんにちは、farm+bizスタッフ熊谷です。今回ご紹介する本は『信州の発酵食』。信州の“ふーど(Foodと風土)”をこよなく愛する発酵学の専門家と郷土料理研究家が、発酵のマジックについてつぶさに綴っています。出版元は「ふるさと再発見」を掲げる長野市の出版社・しなのき書房。今年1月に発酵ならぬ発行されたばかりの初刊です。

信州の発酵食

著者紹介: 【小泉武夫(こいずみ たけお)】1943年福島県の酒造家に生まれる。専門は発酵学・食文化論、農学博士。現在、東京農業大学名誉教授ほか、鹿児島大学など複数の大学で客員教授を務める。「くさい食べもの大全」「発酵はマジックだ」など著書は80冊を超える。「おいしい信州ふーど(風土)」公使。「おいしい信州ふーど(風土)」大使。
【横山タカ子(よこやま たかこ)】1948年長野県大町市生まれ。郷土料理研究家。身近な素材と郷土食をテーマにしたアイディア料理に定評がある。著書に「作って楽しむ信州の漬物」「作って楽しむ信州の保存食」など。

和食の原点は発酵食

2013年12月に「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録され、日本人の伝統的な食文化が国際的に注目されるようになりました。なかでも信州は、和食の基本となる7つの食材=根菜、菜っ葉、果物、山菜、豆類、海藻(加工において)、穀物類すべてがそろう生産地。また和食の味を決める酒や味噌、醤油といった調味料の宝庫でもあり、食の専門家・小泉先生は「和食の原点は長野にあるように思える」と話します。

さらに冬の寒さが厳しい信州では、雪に閉ざされる前に夏から秋にかけての豊かな実りをせっせと漬け込んで、保存食を備えなくてはなりませんでした。そのため、四季がはっきりとした自然風土と地元の産物を活かす知恵として、長期保存の方法が発達。味噌や醤油といった調味料や、漬物など発酵食品が作られてきました。

本書では、「発酵と信州の食文化について」「信州で醸す人びと」「信州の発酵食レシピ」という3つの視点から、豊富な写真とともに発酵の今を紹介しています。

”旨い”には科学的な根拠があった

1つ目は、発酵と信州の食文化について。発酵学の第一人者であり、「発酵仮面」とのあだ名もつけられる小泉武夫さんが、発酵食のメカニズムを数値も入れながら科学的に解明しています。卵の味噌漬けが旨いのは、味噌のグルタミン酸と卵のイノシン酸という異なった旨味成分が合わさることで、1+1=2でなく7の相乗効果を生み出すのだとか。さらに、今後、発酵が医療や環境などの分野で活用される可能性についても触れています。

七号酵母生誕の地 の写真

左ページのの写真奥には、宮坂醸造に残る「1946年 七号酵母生誕の地」と刻まれた石版が。

蔵の数だけ発酵の物語がある

つづいて2つ目は、信州で醸す人びとをクローズアップ。彼らが守る、味噌や酒、すんき漬けや万年鮨など郷土の伝統が紹介されています。今も全国の酒蔵で高いシェアを誇る七号酵母が生まれたのも長野県。銘酒「真澄」を醸造する宮坂醸造です。「子ども心に日本一の酵母を生み出した蔵なんだという自負はありました」と宮坂直孝社長。そのほかにも生酛による酒造りを行う黒澤酒造の話など、信州には点在する蔵の数だけ、発酵にまつわる物語がありそうです。

レシピ満載!発酵食品を身近に取り入れよう

3つ目は、がんばって構えなくても、身近な素材を発酵調味料に漬け込むだけの簡単レシピ集。たとえば味噌に牛肉や魚、豆腐を。酒粕にカブや卵を漬けるだけ。日本では普段使いの調味料ですが、魔法の食材のように思えてきます。最後に「先人の知恵がつまった味噌や酒粕、酢などの発酵食品は、手間暇かけて作られます。だからこそ余すことなく使ってほしい」と横山先生。

発酵食があふれる食卓
発酵食は保存食として冬の信州の食卓を支えてきた

 

この本を読んだら、発酵食の美味しさを味わってみたくなるはず。かれこれ20年前の話になりますが、私は、長野の民宿で食べたおばあちゃんの野沢菜の味が忘れられません。その後、スーパーやデパ地下で買ってみるものの、どうも味が違います。本書で、その秘密が「発酵」にあることがわかりました。地元では、塩水に浸けたあと、大きな桶で1ヶ月以上じっくり発酵・熟成させるのですが、お土産用は発酵させずに袋詰めするため、色はきれいなものの独特の味の深みがなかったんですね。しかも、桶から出すとすぐに風味が落ちるそうなので、あの味は現地で食べるしかないようです。いざ信州へ!

■『信州の発酵食』
小泉武夫・横山タカ子(著)/しなのき書房
定価:本体1,200円+税

読者プレゼント(3名様)

『信州の発酵食』

今回、ご紹介した本を読者3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の応募フォームにてご応募を。抽選で3名様に進呈します。
締切/2015年3月11日(金)
※当選の発表は本の発送をもってかえさせていただきます。

※「信州の発酵食」の読者プレゼントは終了しました

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