大地に根を張って暮らしてきた牛飼い
立ち入り禁止区域に
残された牛たちが生きる意味とは

farm+bizスタッフ杉谷です。今回は、3月に出たばかりの新刊「牛と土 福島、3.11その後。」(真並恭介著)をご紹介します。
東日本大震災から4年が経ち、時折ニュースを目にするものの、少しずつ被災地への意識が薄れていた自分にとって、再び考える機会を与えてくれた本です。

著者は大阪在住のノンフィクション作家・眞並恭介さん。編集・出版会社を経営しながら、これまでアニマルセラピーなど動物をテーマにした著書を出しています。

著者プロフィール:眞並恭介(しんなみきょうすけ)ノンフィクション作家。1951年、大阪府生まれ。出版社、編集プロダクション勤務を経て、1992年にライブストーン株式会社を設立、代表取締役。著書に『セラピードッグの子守歌─認知症患者と犬たちの3500日』。

著者プロフィール:眞並恭介(しんなみきょうすけ)ノンフィクション作家。1951年、大阪府生まれ。出版社、編集プロダクション勤務を経て、1992年にライブストーン株式会社を設立、代表取締役。著書に『セラピードッグの子守歌─認知症患者と犬たちの3500日』。

人っ子一人いない町に、取り残された牛3500頭
国からは安楽死という名の殺処分指示が

この本は、東日本大震災以降、福島の牛と牛飼いたちがたどった4年を綿々と綴った一冊です。福島県内の帰還困難区域と居住制限区域を合わせた面積は、実に東京23区より広く、人っ子一人出会うことはありません。原発事故は、周辺の地域の人々から生きる場所を奪っただけでなく、そこで飼われていた家畜の運命も変えました。

震災が発生した年の秋、眞並さんが現地に別件で取材入りした際に目の当たりにしたのは、時間が止まったかのような町に、餓死して朽ちかけたおびただしい数の牛の死骸、そして悠々と歩く牛たちの姿でした。

生きているのは、震災直後、避難勧告が下った際、わずかの望みをかけて牛舎を開け放した牛飼いにより放たれた牛たち。しかし、ほどなくこの牛たちの殺処分を巡って、国・行政と、牛飼いたちの攻防が始まります。

牛と土1

被爆した牛に商品的な価値はありませんが、牛飼いにとって牛は家族同然。

牛が農地を守り、大地を除染する
研究者と牛飼いが見出した新たな牛の役割

殺処分を拒む牛飼いの中には、何とか生き抜いてほしいと被爆覚悟で立ち入り禁止区域に餌を運び続ける人もいました。行政とは平行線状態が続きます。また殺処分をめぐっては、国や行政だけでなく、畜産で生きることをあきらめた農家とも軋轢が生じます。
『警戒区域の牛は平等に死んでもらわないと、おめえらが牛を生かしているうちは、同意したおれらがばかを見る』

原発事故で恐ろしいのは放射能汚染だけではなく、地域社会のコミュニティを壊し、人と人のつながりをずたずたにしてしまうことです。

牛を生かし続ける理由─。
当初、牛飼いたちは心情的に殺処分を拒んでいましたが、牛たちがその旺盛な食欲で雑草を食べつくす現状を見て、牛が雑草化する農地を守る役牛としての役割があることに気づきます。また大学などの研究機関では、牛をただ殺すだけでなく、被爆の中で生きる牛を調査、研究することで、今後に活かせる情報を発信できると考えてタッグを組んで動き出します。

著者は何度も何度も福島に通い、時には立ち入り禁止区域にも入り、行政との直談判の場にも立ち会い、牛と牛飼いの闘いを克明に記してきました。

https://farmbiz.jp/magazine/wp-content/uploads/2015/04/IMGP0767.jpg

土とつながった暮らしの価値に気づいてほしい

今も国は牛を飼い続けることに対して、飼養管理ができるのであれば許容するが、安楽死処分という方針は変えていません。汚染された雑草を食べることで牛は内部被爆しますが、清浄な飼料を与えれば、3ヶ月ほどで放射線量が問題ない程度にまで下がることも今では分かっているのだとか。

「今回の取材では、牛と土の深さを知りました。牛の死骸が土に還り、草が育ち、牛が食べ、それが糞となり、それが堆肥となって土を肥やす。まさに生命の循環です」と著者の眞並さん。

現在も、立入禁止区域の中で牛たちは生かされて、福島の大地にいます。それを今後も見届けていきたいという著者。土とつながる暮らしや生き方そのものは、都会の生活から遠いところにあるように感じます。しかし少し周りを見渡せば、そこにもここにもつながりはあるはず。たくさんの人がその価値を見出そうとすれば、福島の未来も変わるのかもしれません。

■『牛と土 福島、3.11その後。』 眞並恭介著 1500+税、(株)集英社発行
本の購入はこちら
http://gakugei.shueisha.co.jp/kikan/978-4-08-781567-2.html

牛と土2

読者プレゼント(3名様)

『牛と土 福島、3.11そのあと。』

今回、ご紹介した本を読者3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記、応募フォームにてご応募を。抽選で3名様に進呈します。
※当選の発表は本の発送をもってかえさせていただきます。締切/2015年5月9日

※「牛と土 福島、3.11そのあと。」の読者プレゼントは終了しました。

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